ローラチェーンとは
ローラチェーンとは、短い円筒形のローラをサイドリンクでつなぎ合わせた構造のチェーンのことを指します。他の動力伝動方法に比べて、ローラチェーンによる伝動の特長として、伝動効率が良い、大きな衝撃荷重にも耐えることができる、軸間距離を自由に設定できることが挙げられます。
これらの特長に加えて、多軸伝動ができる、正逆運転ができる、運転速度を自由自在に変更できる、運転環境を選ばない(例:高温から低温、塵埃中でも運転することができる)という強みを有しています。
ローラチェーンの種類
当社のローラチェーンは大きく分けると「標準チェーン」「強力チェーン」「耐環境チェーン」「自転車チェーン」の4種類に分けることができます。
標準チェーン
標準ローラチェーン
標準的なローラチェーンのことを指します。弊社では、あらゆる伝動部に適応できるよう多様な種類のローラチェーンを取り扱っています。
ストレートサイドバーチェーン(小判型・搬送用)
ストレートサイドバーチェーンは、標準ローラチェーンにくびれのない小判形のプレートを組み込んだ耐疲労強度に富むチェーンです。このチェーンを使用することで、直接チェーンの上に搬送物を乗せて運ぶこともできます。
BS規格チェーン(国際規格ISO-B規格)
BS規格チェーンは、国際規格ISO-Bに準拠したローラチェーンです。このチェーンは主に、ヨーロッパから輸入された機械の駆動部で使用されています。
ニューオイルレスチェーン(無給油)
ニューオイルレスチェーンは、自己潤滑性の高い含油ブシュをさらに進化させたローラを備えたチェーンです。このチェーンには標準歯型のスプロケットが使用できるため、汎用性が高いです。
焼結合金ブシュは熱処理されています。オイルレスチェーンSLR-TSは、通常の選定基準でご使用いただけますが、SLR-CSは内リンクの板厚が同寸法であるため、所定の範囲でのみ使用できます。
強力チェーン
ヘビーローラチェーン(耐荷重・耐衝撃・低速)
ヘビーローラチェーンは、激しい衝撃力が繰り返し掛かる伝動に適した大荷重用のローラチェーンです。
標準ローラチェーンの1サイズ上の板厚の内・外プレートを採用することで、疲労破壊を防ぎ、大きな衝撃荷重を吸収するように設計されています。また、強靭鋼を使用したピンは靱性や引張強度を高め、衝撃荷重の吸収に効果を発揮します。引張強さと最大許容強さは、標準ローラチェーンのそれらより10〜20%高いです。
このチェーンは、チェーン速度50m/min以下で使用します。
スーパーローラチェーン(耐荷重・耐衝撃・低速~中高速)
スーパーローラチェーンは、標準ローラチェーンの疲労強度・衝撃強度・引張強さを強化したチェーンです。低速から高速運転までの広い範囲で、安定した伝動効率を発揮します。
このチェーンには疲労強度を高めるため、標準チェーンより一回り大きいプレートが用いられ、プレートの穴加工には、ボールシェービング工法を採用しています。ピンには、靭性と引張強さを高めるため強靭鋼が使用されています。引張強さ、最大許容強さが大きいため、標準ローラチェーンのそれよりも1サイズ小さな伝動部の実現が可能となります。
ダブルキャパシティチェーン(強力・耐荷重・省スペース)
ダブルキャパシティチェーンは、1列チェーンでありながら、2列チェーンの強度が発揮できるDCチェーンと、1列のスプロケットホイルが使用することで、チェーンの軽量化を実現しています。
このチェーンは、リーフチェーンとローラチェーンそれぞれの特長を組み合わせた画期的なチェーンとして、既にご使用のユーザー様からも好評をいただいています。
耐環境チェーン
アクアチェーン(耐水・防錆・耐蝕性・耐摩耗性)
アクアチェーンは、水や塩水にさらされる環境でも使用できるように、標準ローラチェーンに特殊コーティングをしたチェーンです。アクアチェーンは、HKK35〜240の他にも、小形コンベアチェーンにも対応できます。また、アタッチメントの取り付けもできます。
このチェーンは、標準ローラチェーンにとって厳しい条件である屋外(例:立体駐車装置、フォークリフト、港湾設備)、水の降りかかる環境(例:洗車場、洗浄機、食品機械)、湿度の高い環境(例:トンネル、地下室)でも通常通りの運転が可能です。
ステンレスローラチェーン(耐水・防錆・耐蝕性・耐熱性)
ステンレスローラチェーンは、化学工場・食品工場のような耐蝕性・耐熱性が要求される雰囲気での使用に最適なチェーンです。このチェーンには、18-8クロームニッケルステンレス鋼が使用されており、最低-20℃から最高400℃の環境で使用することができます。
ステンレスローラチェーンは、JIS規格・ANSI規格に準拠して製作されているため、精密で安定した伝動が可能となります。
メッキローラチェーン(防錆・耐蝕性・耐摩耗性・光沢)
メッキローラチェーンは、標準ローラチェーンに特殊メッキ(または特殊ニッケルメッキ)を施した光沢のあるチェーンです。このチェーンは、食品機械や繊維機械において汚水や水を弾き、事務機械や印刷機械では汚れを弾くことでその役割を果たします。
メッキチェーンの性能は、標準ローラチェーンと同等であるため、精密かつ強い疲労強度、耐摩耗性、耐衝撃性を持ち、安定した伝動効率を発揮します。
自転車チェーン
ベルテクスチェーン
ベルテクスチェーンは、業界屈指の歴史と技術により培われた製品であり、数々の自転車レースで著名な選手に愛用されています。
ベルテクスチェーンは、JKAの認定部品として全国で活躍しています。
単列ローラチェーンの構造
ピン | チェーンにかかる荷重を支え、ブシュとの繰り返し摺動を行います。したがってピンには、耐剪断強度と曲げ強度のほか、耐摩耗性が求められます。 |
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ブシュ | ブシュは、ピンとの間で軸受作業を行い、スプロケットとのかみ合いで繰返しの衝撃荷重を受けます。そのため、耐摩耗性と耐衝撃疲労性が求められます。 |
ローラ | ローラは、スプロケットとのかみ合いで繰返しの衝撃荷重と圧縮荷重、摩擦力を受けるため、衝撃強度、耐圧縮強度、耐摩耗性が求められます。 |
プレート | プレートは、繰返しのチェーン張力や衝撃張力がかかります。そのためプレートには、高い引張強度のほか、疲労強度、衝撃強度が求められます。 |
割りピン形チェーン | ピンの片側が割りピン(反対側はリベット)で固定したチェーンです。比較的、ピッチの長いタイプのチェーンです。 |
リベット形チェーン | リベット(かしめ)ピンで構成したチェーンです。比較的にピッチの短いチェーンや強力タイプのチェーンがこの形式になります。 |
ローラチェーンの規格
ローラチェーンの規格は、アメリカを中心としたANSI規格と、イギリスのBS規格、ドイツのDIN規格の3つの流れがあります。
日本では、ANSI規格に準拠して、1942年に臨JES第324号として規格化され、その後、数字改正を経て、1980年にJIS B 1801としてまとめられています。
スプロケットは、JISの規格化が遅れ、1962年にJIS B 1802として歯形の形状と寸法について制定されました。
その他、JIS B 1803(ダブルピッチチェーンとアタッチメントおよびスプロケット)、JIS B 1804(リーフチェーン)、JIS B 1456(チェーンカップリング)などの規格が順次まとめられました。